オステオパシーの総括

オステオパシーのまとめ   それでも有効性を信じている?!


 ここまでの論評を読むと僕自身がオステオパシーに否定的であると思われているかもしれないが、実はそうではない。

 徒手療法を長年使っていて感じるのは、治療方法を極めるのは何年もかかるなあということである。そこそこのレベルなら数年で使えるようになるが、技術と知識と思考プロセス(最近はクリニカルリーズニングと呼ばれている)を身につけるには地道な努力を長く続ける必要がある。

 ましてやオステオパシードクターは内科(実際は総合的に診る家庭医が多く、西洋医学のように外科や産科など各診療科別のオステオパシードクターがいるそうである)プラス徒手療法を行うわけであるから、それを極めることは並大抵ではないと思う。論文には表れない治療者の能力次第で結果は変わる可能性がある。

 オステオパシーを作り上げたATスティルは学校では手技をほとんど教えなかったそうである。「構造と機能がわかれば手技はおのずと決まってくる。どんな手技を使うかは自由である。」との言葉が残っている。
 頭蓋仙骨療法を提唱したサザーランドの講習で、彼の信奉者たちがもっと頭蓋の治療を教えてほしいと要望すると、サザーランドは激怒したそうである(靭帯性関節ストレインp12)。それは首を切り取って体を投げ捨てるのと同じ行為であり、ここで教えているのはオステオパシーであるといったそうである。

 つまり頭蓋仙骨療法だけの効果を判定すること、徒手療法だけの効果判定をすること自体がオステオパシーの哲学に合わないということである。最近書籍やDVDも多く出版されて、たくさんの治療手技が紹介されているが、その方向性自体も間違っているような気がする。
 身体を一つの単位として、構造と機能の「相互関係」から身体、心、スピリッツまで捉えて、徒手療法に限定せずあらゆる必要な治療を行う。それも病気を治す方向ではなく本来の健康を取りもどす方向へ。この哲学に沿った本来のオステオパシーが実践できると西洋医学以上の効果があるのではと期待してしまうのである。RCTという科学的な判定方法が全ての真実を表せるわけではない。均一で客観的に見える部分でしか現実を捉えることはできないからである。

 オステオパシーに奇跡を求めるのは良くないと思うが、臨床において今以上の治療効果を求めるならばこの哲学は参考にすべきことだと考えている。

補足

 このテーマの書き出しは実はよくある権威づけのための表現を真似した。

統合医療の第一人者(権威)といえばアリゾナ州立大学教授(権威)のアンドルー・ワイル博士(権威)が最も有名(権威)です。「癒す心、治る力」(角川書店)「人はなぜ治るのか」(日本教文社)などの著書(権威)を読んだ人も多いのではないでしょうか。そのワイル博士が師と仰ぐ(権威)医師がフルフォード博士(権威)でオステオパシードクターです。

 こんな感じで権威づけをすると無意識にオステオパシーがいかにもすごいものという印象を持ってしまう。とある治療法がいかにも効きそうという錯覚を与えるのは簡単である。皆さん、騙されないように!