痛みと治療の論考集

 システマティックレビューやガイドラインに基づく治療では効果は頭打ちになる。それ以上の効果を求めると常識を疑ってみる必要が出てきた。研究から明らかになった事実は一つでも解釈はいくつもある。臨床経験に基づき新たな解釈を試みた。

 

 英語の論文を多く参考にしているが、それが常に正しいわけではない。研究は限定された条件下でのみ再現できるものであり、それを臨床一般に普遍化できるとは限らない。また臨床研究では多くの不確定要因もあり、10年、20年後にその理論や方法が覆されることがある。更に臨床では客観化できない事実が多くあり、そこに証明されない真理が存在することもある。

 臨床家はまず、何より自分自身の目と手、評価と治療で真実を検証してください。

私たちには「現状維持のバイアス」が無意識に働いている。
「現状維持のバイアス」は、我々の行動だけでなく、我々の持つ知識、意見にも影響を与える。人間は、自分がすでに知っていることが正しいという証拠を受け入れ、正しいことを追認することはあっても、本当に正しいかどうかをあらためて論理的に検証するようなことはまずしない。(Tom Stafford, Matt Webb:MAIND HACKS,オライリージャパン,2005より引用)