評価の特徴

 通常の評価においてはレッドフラッグを除き、あらゆる病態や機能障害が同等に存在する可能性があるという前提で問診や検査・測定を進めていく。しかし実際は筋スパズムによる痛みが圧倒的に多いので、それが原因の可能性が高いという前提で評価を進める方が早く原因を絞り込める。

1. レッドフラッグの有無を判別する
2. 運動器の組織損傷・炎症の有無を判別する
3. 中枢機能障害性疼痛の有無を判別する(初回検査だけでは困難で、治療に対する反応も含めて判断する)
4. 筋スパズムの有無を判別する
*当然、全ての病態が同時に存在する場合もある


 たとえば腰痛症では非特異的腰痛がほとんどで、これは筋スパズムによるものが多い。しかし若年者では脊椎分離症、青壮年では腰椎椎間板ヘルニア、高齢者では圧迫骨折や腰部脊柱管狭窄症が痛みの原因の場合もあるので見落としてはいけない(構造異常を進行させないリスク管理が必要)。ただし画像所見で上記の病態が見つかっても痛みは筋スパズムによることもある。
 中枢機能障害性疼痛の有無を判別するには、線維筋痛症の診断基準に使われる18圧痛点やCentral Sensitization Inventory (CSI)が有用である。CSIの日本語版やそのショートバージョンは西上PTが開発している。ただしこれらの評価表では見落とされる場合もあり、CSIを開発した論文では詳細な身体所見の一覧を紹介している。圧痛点は線維筋痛症の診断基準では11カ所以上となっているが、10カ所以下でも数が多いほど痛みの感作が生じていると解釈するべきと考えている。
 また徒手療法を行っても筋スパズムが軽減しない場合や再発を繰り返す場合、筋スパズムが軽減しても運動時痛が軽減しない場合も中枢機能障害性疼痛の可能性がある。ただし繰り返しになるが、このような場合にはまずレッドフラッグの再確認が必要である。

【CSI文献】
Mayer TG, et al: The development and psychometric validation of the central sensitization inventory. Pain Pract 2012; 12:276-285.
Neblett R, et al: The Central Sensitization Inventory (CSI): Establishing clinically significant values for identifying central sensitivity syndromes in an outpatient chronic pain sample. J Pain 2013; 14:438-445.
【CSI日本語版】Tanaka K, Nishigami T, et al. Validation of the Japanese version of the Central Sensitization Inventory in patients with musculoskeletal disorders. PLoS ONE (2017) 12(12): e0188719Supporting information S1 Table. The Japanese version of CSI.
【CSI簡略版】Nishigami T, Tanaka K, et al: Development and psychometric properties of short form of central sensitization inventory in participants with musculoskeletal pain: A cross-sectional study. PLoS ONE (2018) 13(7): e0200152.


痛みの原因となる筋スパズムの発見方法

【動作時痛】
  動作に関与する筋を運動学的に解釈
  (伸長痛、短縮痛、収縮痛の観点から)
【安静時痛】
  姿勢保持に関与する筋を運動学的に解釈
  不良姿勢なら伸長痛、短縮痛
  良姿勢なら持続的収縮痛、坐位では殿部の圧痛
 *臥位での安静時痛は内臓器系の異常や炎症を疑う(姿勢を変えても続くとき)

以上から予測した筋を触診し、筋緊張の亢進と圧痛があれば筋スパズムと判断する。
圧痛ではなく違和感やくすぐったさを患者が訴える場合も該当する。