カリスマのいた時代

 どの世界にもカリスマという存在が出現する。
 カリスマ美容師、カリスマトレーナー、カリスマ投資家、、、。

 理学療法士の世界にも過去に出現してきた。今も存在するのかも?

そのカリスマ理学療法士の特徴は
・ 優れた技術、または理論を持っている
・ ものすごく自分の技術や理論に自信を持っている
・ 他者を安易に否定する
・ 周りに信者がいる

 若くて知識も自信もないセラピストは何かにすがりたくなる。これが絶対だと言われると安心する。これさえ勉強すれば大丈夫だと言われれば、楽なので信用したくなる。
 現在は山のようにある情報の中で、全てを集めて読むことは無理だし、何が本当で何が間違いか判断するのも難しい。そんな心の隙間にカリスマの言葉は染み込んでくる。

 カリスマの指し示す知識や技術は一面では的を射て、すごい効果を発揮する。そして効果を出さなかったときの言い訳がものすごくうまい。知識や技術、そして経験のない若いセラピストは簡単に信じ込んでしまう。プラスの面もあるが、一番の問題は間違っていても本当だと信じてしまう点である。信者になったセラピストは患者の変化(良くなったかどうか)よりもカリスマの言葉を信用する。患者が良くならないのは患者が悪いか、自分の技術が未熟だからと考えてしまう。決してカリスマの知識や技術が間違っているとは考えない。

 カリスマの言うことが間違っていると思い出したセラピストはだんだん離れていく。そして勉強を止め、患者の方を見ず、カリスマの方だけを見ているセラピストだけが周りに残っていく。その信者が出現した段階でカリスマは本物のカリスマになる。

 マジメに勉強し、患者さんに向き合う真っ当なセラピストは、一部は正しいが一部は間違っているという普通の判断をする。でもカリスマの言葉の誘惑を振りほどくのはなかなか難しい。「これが正しい。こうすれば良くなる。これさえ出来れば大丈夫だ。」

 自分自身を振り返っても、かなり信者に近かった。正直に言うとカリスマの職場に転職しようと本気で考えたし、自分の担当する良くならない患者さんをカリスマのいる病院に紹介したいと何度も思った。ただ信奉する人がお互いを批判し合うので矛盾に気づけただけかもしれない(僕はイソップ物語のコウモリのように、それぞれのカリスマのところに顔を出していたので)。また毎日良くならない患者を診て、申し訳ない、情けないと思って、毎日出会えないカリスマより毎日できる勉強にすがっていただけかもしれない。


若いセラピストに先輩として、同じ過ちを繰り返してほしくないので伝えたい
・ セラピストであり続けるかぎり日々悩むのが当たり前である
・ 本物のセラピストは謙虚である
・ 楽をして得た情報や技術はあまり役に立たない
・ 本当かどうかは患者さんが教えてくれる