最近よく目にするダイレクトメールやFAX案内のキャッチコピーに「即効性のあるテクニックが簡単にマスターできる」という言葉が多い。いかにも今どきの若いセラピストを引き付ける魅力的なフレーズである。
実際そのようなセミナーに参加すると、講師が参加者を相手にテクニックをやって見せ、劇的な変化を見せたりもする(毎回ではないが)。そして参加者同士で何度か練習し合うと効果が出てくる。「私にもできる!」「俺ってやるじゃん!」という錯覚を持つ。ところがいざ病院などの臨床の場で使ってみるとあまり効果がでない。時には痛みを与えて悪化させたりしてしまう。「おかしいなあ?」「こんなはずでは?」と困惑する。
テクニックの治療対象はほとんどが有痛性の可動域制限で、セミナーの参加者は基本的に健常者である。健常者では有痛性の可動域制限の原因は軽度の筋スパズムだけである。ところが病院等で診る患者さんは様々な基礎疾患があり、筋スパズムに加え病理学的異常が併存していることが多い。脳卒中による麻痺、骨折に伴う筋損傷、糖尿病による結合組織の糖化(硬くてもろい組織になる)等々。有痛性の可動域制限は同じでも原因が違う。したがって健常者と同様の効果が出るはずがない。しかしセミナーではそんなことは教えてはくれない。病態を把握せず(評価をしないで)現象面だけを捉えると効果が出ないだけでなく、悪化させる危険性がある。
楽をしてマスターできるような医療技術はありません。
甘いキャッチコピーに騙されないように!