腰痛のサブグループ化の一つとしてマニピュレーションの適応判定基準が検討されている。最も頻繁に論文に出てくるのがFlynn’s clinical
prediction rule (CPR)である。
脊柱のマニピュレーションで短期的な改善が見られる腰痛患者を判別する臨床予測基準
A Clinical Prediction Rule for Classifying Patients with Low Back Pain
Who Demonstrate Short-Term Improvement With Spinal Manipulation
Timothy Flynn, et al
Spine 2002;27:2835–2843
マニピュレーションの適応判定基準
⇒5項目中4項目該当が陽性(陽性尤度比:24)
• 発症後16日以内
• Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire (FABQ)work subscale score <19
• 少なくとも一側の股関節内旋が35°以上
• 腰椎のHypomobility(P-A test)
• 膝より遠位に症状がない
その後、Flynnの臨床予測基準の妥当性を検証する研究が行われている。
腰痛患者において脊柱マニピュレーションが最も有効だと判定できる臨床予測基準
A Clinical Prediction Rule To Identify Patients with Low Back Pain Most
Likely To Benefit from Spinal Manipulation: A Validation Study
Childs JD, et al
Ann Intern Med 2004, 141:920–928
【方法】
• 腰痛患者にFlynnの臨床予測基準の測定後、マニピュレーション+運動療法群と運動療法のみ群に分ける
• 脊柱のマニピュレーションは脊柱の回旋スラスト
• 運動療法は体幹MSE+バイクorトレッドミル
• 測定はOswestry Disability Questionnaire (ODQ)とNRS(現在、最善、最悪の平均)
【結果】
Flynnの臨床予測基準に該当する患者がマニピュレーションを行った場合、ODQが有意に改善した。
次にFlynnの臨床予測基準の妥当性を否定する論文も出てきた。
脊柱マニピュレーションに対する臨床予測基準の独立した評価
Independent evaluation of a clinical prediction rule for spinal manipulative
therapy: a randomised controlled trial
Mark J. Hancock, et al
Eur Spine J (2008) 17:936–943
【方法】
• 急性期の非特異的腰痛症患者に脊柱マニピュレーションかプラセボ治療を2~3回/週、4週間実施
• 治療手技は単一ではなく、評価に基づき部位(胸椎から股関節まで)や速度を変更する臨床的なやり方
• 1,2,4,12週目に痛みとRMDQを測定
【結果】
前もって実施した臨床予測基準に該当するか、しないかで効果の違いはなかった。
そして腰痛の臨床予測基準の最新レビューである。
腰痛の理学療法マネージメントにおける臨床予測基準
Clinical prediction rules in the physiotherapy management of low back pain:
A systematic review
Robin Haskins, et al
Manual Therapy 17 (2012) 9-21
【結論】
現在の根拠では診断、処方、予後に関して臨床予測基準を、信頼性をもって臨床で使用することはできない。