AKAから受けた衝撃

 学生の時の長期実習で担当していたRAの患者さん。TKAの術後で膝の可動域を獲得しようとアイシングやストレッチを試みていたが、屈曲45度で痛みのため改善しなくなった。その時のスーパーバイザーが患者さんに側臥位になってもらい、骨盤をちょっと押すと膝が一挙に90度まで曲がってしまった。まるで魔法を見たような衝撃だった。それがAKAとの出会いだった。実習から帰ってから数少ない文献を集め、働き出してから使ってみるが全く効果なし。ほぼ使わなくなった。

 5年目にAKAの長期セミナーが始まったことを知り、第2回目のセミナーに参加した。1週間のセミナーと半年後に3日間のテストという形態だった。セミナーは本当に充実しており関節の触り方を一から学ぶことができた。しかし臨床に戻ってから使ってみても効果はたまに出るぐらいだった。なによりも本当に仙腸関節や肋椎関節が動いているかどうかすら実感が持てなかった。半年間の悪戦苦闘の末の試験では、筆記試験は100点満点中92点で、間違ったところも関節運動学に関する見解の相違で、自分では合っている自信があるぐらいだった。でも実技ではAKA単独技術は5点満点で1点、複合技術は5点満点で2点と散々たる結果だった。一人で頑張っても限界があると感じ、インストラクターの勤務する病院に見学に行ったり、勉強会に参加させてもらったりした。それで少しずつ効果が出るようになってきた。

 兵庫県士会の学術部に入っていたので講習会でAKAをやってもらえるように働きかけ、開催できる運びとなった。運営側として参加していたが、AKAの技術が変わっていた。仙腸関節のAKAでは当初、20㎏ぐらいの力を加えていた。練習のために体重計をベッドの側面に押し付けて力を入れることを繰り返していたぐらい大きな力が必要だった。ところが新しい技術は1㎏以下のわずかなもので、それで十分反応がでる。

 今まで何をやっていたのかと衝撃を受けた。後から聞いたところではAKAを開発した博田先生が開業されて、今までの技術を使ったところ悪化する患者さんが何人か出たので技術の改良をしていった結果、今の方法になったとのことだった。この時思ったのが博田先生に技術の改良ができて、なぜ自分には出来なかったのかだった。

 博田先生は患者さんを観ていて、僕は博田先生を観ていたのだった。いかに博田先生の技術を真似して同じようにできるかだけを目指していた。

 博田先生は偉大な先生だがそれによるマイナスもある。最近のAKAの学術誌で講演会の内容が記録されていたが、「インストラクターの技術もまだ自分の17年前のレベルである」との発言。これを聞くとますます皆は博田先生の技術を目指してしまう。自分で患者さんに向き合って自分で技術を改良していこうという発想にならない。それがAKA博田法の発展を止めているように思える。もっと良くできるのに。