見学のすゝめ

 セミナーやテキストは一般的によくみられる患者さんを想定している。限られた時間や限られたページ数で重要なことを伝えようとすると、どうしてもそうなってしまう。でも実際の患者さんは一般的でない方が多いかと思う。「こんな時はどうしたらいいのか」という個別的な問題の答えを知ろうとすると、それは臨床の場の見学が一番である。

① 具体的な患者さんをどう評価してどう治療するのか?
② その時どのように考えて、そうなったのか?
③ 自分ならどんな障害を仮定して、どんな治療を選ぶのか?

 観て、質問して、考えて、またすぐには理解できないから質問を繰り返して、、、実習生の時のように小さな手帳にいっぱい書き込んで、それを次の日から臨床で試してみる。

 まずは学校の先輩や職場の近くの病院から始めるといい。見学に慣れてきたらセミナーの講師の臨床を見に行くことをお薦めする。その技術が本当に有効なのかが一目瞭然である。10人の患者さんの内いったい何人満足して帰られるのかシビアに見てみよう。時には現実にがっかりすることがあるかもしれないが。
 無痛での治療ができると言っていたのに、実際は患者さんが痛がっているとか。理論はしっかりしているのに、結局患者さんは変化せず、その時にもっともらしい言い訳を言ったり(自分の能力が足りないうちはそれが言い訳とは気づかないが)。

 現場はセミナーや文献では学べないものがいっぱいある。しかも無料で!!
 ぜひ手土産を持って見学に行きましょう!


僕の見学先を覚えている範囲で紹介する。

 臨床に出て3年目ぐらいから学校の先輩を頼って見学に行かせて頂いた。神戸大学医学部附属病院、小野市民病院、あんしんクリニック。
 また兵庫県士会の研修会や活動で知り合った先生方を頼って見学に行かせて頂いた。国立加古川病院、有馬温泉病院(ボバース法全盛のころ)、関西労災病院、信原病院。
 学校の教員をしていた時は実習先で勉強になりそうな病院にも見学に行かせて頂いた。市立伊丹病院、宝塚市立病院、三田高原病院、みきやまリハビリテーション病院、松原メイフラワー病院、河上整形外科、いなみ野病院、緑駿病院、老人保健施設 緑寿苑。
 セミナーの講師にお願いして見学させて頂いたのはAKAでは有馬温泉病院、スパインダイナミクス療法では静岡の清泉クリニック。
 セミナーの受講生として知り合った先生では日本医科大学付属病院、そして腰痛の師匠として尊敬する荒木先生のところでは九州の天生堂医院や姫野病院に年に一度は通わせて頂いた。
 整形外科医の診断方法を学びたくて、パンジョスポーツクリニックの大里先生の診療、そして日本運動器疼痛学会で講演を受け知り合った現 大阪大学疼痛医学寄附講座の三木先生には行岡病院での慢性疼痛外来を見学させて頂いた。最近では石川県にある有川整形外科医院の有川先生から最先端の診療方法を学ばせてい頂いた。
 まったく知り合いがいなくても、カナダに一人旅に出たとき、バンクーバーのダウンタウンにあった大きな病院にふらりと立ち寄って、見学をお願いした時も、快く受け入れてもらったことがあった。

 今まで見学をお願いして断られたことはありません。頑張っている人に対してセラピストや医師は優しく対応して頂ける。本当にありがたいことである。