写真は頸椎のマリガンコンセプトによるSNAGSの手技である。頸部痛のある大部分の患者さんのT1棘突起は右に変位している。その変位に関係なく首の右回旋時は棘突起を左に、左回旋時は右に圧迫を加えると痛みや可動域が改善することが多い。これでは位置異常が修正されたとは言えないのではないだろうか。ちなみに職場の3名のスタッフ(無症状)のT1棘突起も全員右変位であった。
次に腓骨の位置異常に関する論文を紹介する。
自覚的慢性足関節不安定症患者の腓骨の位置
Fibular Position in Individuals With Self-Reported Chronic Ankle Instability
Tricia J. Hubbard, et al: J Orthop Sports Phys Ther 2006;36:3-9.
何度も足関節捻挫を繰り返すこの対象者に対する結果では、検定すると優位に腓骨の外果は前方に変位していることになっている。しかし個々のデータを見ると、30名中17名は前方変位で、13名は後方変位なのである。
考察で過去の論文をまとめたところでも3論文は後方変位になっている。
Maviらと筆者は矢状面で計測:前方変位
Erenら、Scrantonら、 BerkowitzとKimは水平面で計測:後方変位
撮影方法の違いが結果の違いと述べているが、筆者らの報告でも先に述べたように後方変位の人が結構いる。
しかし当院での経験でも足関節捻挫後の背屈時痛は9割近くが腓骨外果の後上方への誘導で軽減がみられる!!
ということは外果がどちら変位していても後上方へ誘導すれば痛みが軽減するということになる。(臨床的にはどちらに変位しているか評価不可能である)
マリガンコンセプトの本質は位置異常という病態(機能障害)に対するアプローチではなく、機械刺激による疼痛抑制なのではないだろうか?!
関節の位置異常という病態は存在しない。
これを検証する方法を紹介する。
足関節の運動時痛に対して外果の後方誘導は有効な方法である。特にテーピングでこれを実行すれば即座に運動時痛は軽減する。マリガンコンセプトでは外果の前方変位という位置異常が存在し(評価方法は存在しないが)、これをテーピングで修正するから痛みが軽減すると述べている。
検証1:外果の後方誘導をせず、ただ同じ場所にテープを張るだけでも痛みの軽減が確認できる。
検証2:外果の後方誘導のテーピングを行い、痛みの軽減を確認した後、更に内果の後方誘導のテーピングを追加して行っても痛みは悪化しない。
一度この検証を試してみてください!